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●ある日のイタリア人のお客さん

国では歴史的建築物の修復をしているという男性。 なぜかというか、やはりというかこだわりがあるようで、 いろいろな材料・サイズのものを言葉少なに手にとっては悩んでおられます。

私:
「どのようなものをお探しですか?」

*もちろんお友達の通訳出来る方と一緒です。(^^ゞ

お客さん:
「しっかりしたものがいいのだけれど、熱にも強いものが・・・。」
私:
「熱ですか。普通ハンコはあまり熱には強くないですが。 どういう風にお使いになりたいのでしょうか。」
お客さん:
「手紙の封緘に使っても大丈夫なもので、スタンプにも使いたいのですが。」
お友達:
「なんか、本人はものすごくこだわりがあるみたいで。」

どうも、このお客さんは自分のマークとして修復したものに捺したり、 手紙の封緘の蝋に捺したりしたいらしく、この用途両方に使いたいと言うのは、 あまり聞かない使い方だったので、ちょっと考えてしまいました。
彫刻の仕方に少し工夫が必要かなと思ったからです。

お客さん:
「コレとコレが気に入ったのですが、どちらかよりよい方で、もう少し安いものが無いでしょうか。」

お客さんは黒水牛とオランダ水牛の色物(牛角色)の15ミリ丸のものを 手にとって悩んでおられるようで、印材は気に入ったのですが予算より少し高いようでした。

私:
「より良い材料というと、オランダ水牛ですが、この二つは強さは同じくらいです。 少しお安く出来るものとなりますとコレはどうでしょう。」

普通は出せない少し短く、色目の悪いオランダ水牛をお見せしました。
コレは以前に、黒い部分が多くオランダ水牛としては色的に品質が劣り、 また芯の部分が大きく印面に影響が出るので店頭に出していなかったものを思い出してお見せしたものです。
今回は、漢字でなく文字が単純なので、芯の部分を避けて彫刻できそうで、多分大丈夫という判断でした。

材料の説明をしたところ納得していただき、

お客さん:
「では、コレでお願いします。」

ということになりましたが、彫刻するのが、アルファベット二文字にその下に漢字二文字ということになってしまい、 幸い画数の少ない漢字でしたのでよかったのですが、これを封緘の蝋に使うのかと思うと頭が・・・・・・・。チャントできるものかどうか。

数日後、引き取りに来られて、出来上がった印章を見ながらお客さんとお友達が何かしきりと話しているのですが。 さすがイタリア人で元気が良い話し方で、気に入ったのかいらないのかひやひやししていました。

お友達:
「あのー。すみません、なんか本人めちゃくちゃ気に入ってるんですけれど。」
私:
「えっ?気に入っているんですか?めちゃくちゃ。良かったです、安心しました。」
お友達:
「まだ二ヶ月ほど滞在していますので、帰って手紙に封緘したら見せに来るって言ってます。」
私:
「見せにですか?それはまた、気に入ってもらって。」

で両手で握手をして出て行かれました。
その後また数日して、本当に封緘したものと紙に捺したものをもってこられて、しきりにしゃべってこられ、 圧倒されてしまい何がなにやらわからないうちに、また、両手でマンガのようにブンブンと勢いよく握手をして帰っていかれました。

お友達:
「封緘がこんなに綺麗に捺せるとは思っていませんでした、国に売っている封緘用のものより深く彫刻してあるので、 しっかりとシャープに捺せて非常に気に入ったみたいなんですけど。」

もともと、印章の発祥としては、封泥に使ったらしいのですが、ヨーロッパなどでよく売っている金属に刻印して木の柄が付いた封緘用のものは、 確かに文字の部分の彫りが浅いです。多分詰まったりしないようにとか、封蝋した時の蝋上の文字が欠けないようにとか、 色々な意味がありそのような形態になったのでしょう。日本式の印章の彫り方ですと実際に使ったときにどうなのか、又来店して聞かせて欲しいです。

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